From Surviving, to Thriving.
わんこのおみせ が向かう先 — 救われるから、愛されるへ。 2021 年 NJ で見た景色から始まる、 動物福祉学に基づく事業の社訓。
- 2021年ニュージャージーで見た「最後の時間」の犬たちが、すべての出発点
- 「殺さない」だけでは足りない — 動物福祉学の5つの要素が示す答え
- 社訓「From Surviving, to Thriving.」がすべての判断基準
- わんこのおみせは5要素に対応する7事業を段階的に立ち上げる
- 4つの段階で、殺処分ゼロ、そしてすべての犬が幸せに生きる世界へ
From Surviving, to Thriving.
救われるから、 愛されるへ。
2021 年 10 月 2 日、 ある湖のほとりで
ニューヨークに留学していた頃、 私はフードトラックの仕事を手伝っていました。
2021 年 10 月 2 日、 土曜日。
向かったのは、 ニューヨーク市から車で何時間か走った田舎町。
ニュージャージー州の Horseshoe Lake という、 大きな公園でした。
その日のイベントの名前は、「Puptoberfest 2021」。
主催は Eleventh Hour Rescue という保護犬の団体でした。
「Eleventh Hour」 は英語で「最後の時間」 を意味する言葉です。
殺処分される直前 — まさに最後の時間にいる犬たちを、 ぎりぎりで救い出す活動をしている団体でした。
会場に着いて、 私は驚きました。
100 頭ほどの犬たちが、 ケージに並んでいます。
フードトラックは何台も出ていて、 参加者は数百人。
仕事の合間、 ある瞬間にスタッフがぽつりと言いました。
「ここで引き取り手が見つからなかった犬たちは、 殺処分されるんだ」
100 頭の犬たち。
その日の終わりまでに家族を見つけられなければ、 命が終わります。
私はその場で固まりました。
何度も、 犬たちのケージを見に行きました。
どの犬も、 人懐っこくて、 健康そうで、 ただ最後の機会を待っているだけの普通の犬たちでした。
仕事を続けながら、 私はずっと考えていました。
こんなにも、 「最後の時間」 に追い込まれている犬たちが、 世界中にいるのか。
そして、 もうひとつ思いました。
いつか自分が事業で力をつけたら、 こういう犬たちを救える存在になりたい。
それが、 今この記事を書いている私の出発点です。

「殺さない」 だけでは、 足りない
あの日から数年、 私は犬と暮らすことを考え続けてきました。
最初、 目標はシンプルでした。 日本の殺処分をなくしたい。 それだけでした。
でも、 調べていくうちに、 気づきました。
犬を「殺さない」 だけでは、 足りないのです。
たとえば。
殺処分されなくても、 狭い場所で長く留守番させられて、 孤独な犬がいます。
散歩に行けず、 退屈している犬がいます。
何が悲しいのか分からないまま、 ストレスで毛が抜けている犬がいます。
「生きている」 と「心が満ちている」 の間には、 大きな違いがあります。
だから私は、 殺処分ゼロの、 さらにその先を目指したいと思っています。
すべての犬が、 救われるだけでなく、 愛され、 心が満ちている世界。
動物福祉学が辿り着いた答え
世界の動物福祉学が、 25 年以上かけて辿り着いた答えがあります。
詳しい話は別の記事に書きました。 ここでは結論だけ。
犬の幸せは、 5 つの要素で考えるとよい、 というのが現代動物福祉学の答えです。
- 食べる楽しみ — ただ栄養がある食事ではなく、 嗅ぎ・探し・楽しむ食事
- 安心できる場所 — 自分で居場所を選べる、 安らぎのある住まい
- 健康と活力 — 痛みがなく、 年齢相応の身体機能を保てる状態
- 動く・つながる — 自分で選び、 仲間と関わり、 そして人と深い関係を築く
- 心が満ちている — 楽しさや満足を感じ、 ストレスがない毎日
特に大きいのが 4 番目。
ここはさらに 3 つの軸に分かれています。
- 4-A. 自分で選ぶ自由(散歩で嗅ぎたい匂いを嗅ぐ、 知育トイで遊ぶ)
- 4-B. 仲間との関わり(犬同士の社会化、 犬友達)
- 4-C. 飼い主との絆(見つめ合うと愛着ホルモンが出るという研究があります)
そして 5 番目の「心が満ちている」 は、 1〜4 が整った結果として現れるもの。
つまり、 犬の心が荒れているとき、 答えは「心」 だけを見ても見つかりません。 食事(1)、 環境(2)、 健康(3)、 自由・仲間・絆(4)のどこかに、 原因があります。
5 つの要素は、 別々のものではなく、 ひとつの体系として整える必要があるということです。
私の社訓
From Surviving, to Thriving.
救われるから、 愛されるへ。
これが、 わんこのおみせ の社訓です。
「Surviving(救われる)」 は、 出発点。 命が助かる。 殺処分されない。
「Thriving(愛される)」 は、 ゴール。 関係を持ち、 心が満ちる。
すべての判断を、 ここで測ります。
これは、 犬を Surviving の段階に留めるだけか?
それとも、 Thriving に進めるか?
進めないものは、 扱いません。
わんこのおみせ の構造
母艦は わんこのおみせ。 その下に、 5 つの要素に対応する 7 つの事業を立ち上げます。
「5 つなのに 7 つあるのはなぜ?」 と思われるかもしれません。
理由は、 4 番目の「動く・つながる」 が 3 つの軸(自分で選ぶ・仲間と関わる・人と絆を結ぶ)に分かれているから。 動物福祉学では、 この 3 つは別々のものとして扱われます。
そして 5 番目の「心」 は、 1〜4 を総合的にケアする事業になります。

5 つの要素 → 7 つの事業
| 要素 | 事業 | 役割 |
|---|---|---|
| ① 食べる楽しみ | わんこのごはん | 嗅ぐ・探す食事、 知育トイ、 個別の食事設計 |
| ② 安心できる場所 | わんこのおうち | 居場所を選べる住まい、 関節保護、 静と動の使い分け |
| ③ 健康と活力 | わんこのからだ | 予防医療連携、 健康記録、 シニア期の QOL |
| ④-A 自分で選ぶ自由 | わんこのあそび | 嗅げる散歩、 自由な遊び、 体験設計 |
| ④-B 仲間との関わり | わんこのなかま | 犬同士の社会化、 ドッグラン、 飼い主同士のコミュニティ |
| ④-C 飼い主との絆 | わんこのきずな | 犬種ごとのアパレル(飼い主が愛犬を世界に表現する道具) |
| ⑤ 心が満ちている | わんこのこころ | 1〜4 が整った結果としての心。 トレーニング、 行動カウンセリング、 知識発信 |
⑤「心」 は、 1〜4 の総合
わんこのこころ は、 ほかの事業とは少し性質が違います。
なぜなら、 心の状態は、 1〜4 の積み重ねの結果として現れるから。
たとえば、 分離不安症の犬がいたとします。 トレーニングだけで解決しないことがほとんどです。 食事(①)が偏っていないか、 安心できる場所(②)があるか、 体に痛み(③)がないか、 自由(④-A)・仲間(④-B)・飼い主との関係(④-C)が足りているか — すべての領域を見直す必要があります。
だから わんこのこころ は、 単独の商品やサービスではなく、 1〜4 を統合してケアする場として設計します。
ドッグトレーニング、 行動カウンセリング、 飼い主のためのコミュニティ、 そして「わんこのはなし」 という啓蒙メディア。 これらが組み合わさって、 心が満ちている毎日を支えます。
私たちが向かう先 — 4 つの段階
私はこれを、 4 つの段階で達成します。
| 段階 | 焦点 |
|---|---|
| 第 1 段階 — 始める | 事業の基盤を、 ひとつずつ確かにつくる |
| 第 2 段階 — 広げる | 事業を、 桁違いに大きくする |
| 第 3 段階 — 影響する | 業界・社会・政策に変化を起こす |
| 第 4 段階 — 達成する | 殺処分ゼロ。 すべての犬が Thriving する世界 |
時間はかかります。 動物福祉学が答えに辿り着くまでに 25 年かかったように、 社会を変えるには時間が必要です。
注: この各段階の中身は、 2026 年 5 月時点での想定です。 状況に応じて柔軟に変えていきます。 変えないのは、 「From Surviving, to Thriving.」 という方向性だけです。

いま、 始まったばかり
正直に書きます。
わんこのおみせ は、 今、 始まったばかりです。 まだ会社というかたちにもなっておらず、 7 つの事業の基盤を、 ゼロから組み立てているところです。
すべての判断を、 社訓に照らして見直しています。
これは、 犬を Surviving の段階に留めるだけか?
それとも、 Thriving に進めるか?
これからやることは、 こうです。
- 最初の事業として わんこのきずな を立ち上げ、 業界に届く形まで育てる
- 7 つの事業の判断ガイドラインを、 動物福祉学の答えに沿って書き出す
- わんこのはなし で、 5 つの要素を順に深掘りする記事連載を続ける
- わんこのこころ の最初の形を、 ドッグトレーナーや行動学の専門家と一緒に考える
まず、 事業を回す。 そこから、 次が始まります。

私たちが向かう先
私が最終的に目指す世界は、 こうです。
5つの要素のすべてが満たされて、 ただ生きるのではなく幸せに生きている。
飼い主は犬を、家族として迎え大切にしている。
殺処分される犬はもういない。
悪い扱いをするブリーダーやペットショップも、 過去のもの。
どの犬も、 ただケージの中で「最後の時間」を待つことなく、自分の家で、愛されながら、心が満ちた毎日を生きている。
この世界に、 辿り着きたいと思っています。
辿り着けないかもしれません。
でも、 辿り着くために動かなければ、 確実に辿り着きません。
辿り着く道のひとつとして、 わんこのおみせ から始まる事業を育てていきます。
ここで扱うすべての商品、 すべてのサービス、 すべての言葉が、 ひとつの社訓の答えとして機能します。
From Surviving, to Thriving.
救われるから、愛されるへ。
2021 年 10 月 2 日、 ニュージャージーの Horseshoe Lake で見た景色を、 私は忘れません。
あの 100 頭の犬たちのうち、 何頭が家族を見つけられたのか、 私は知りません。
でも、これから、同じ景色が日本のどこにも生まれないようにします。
その先にある、 家族として愛され、 幸せに生きる犬たちの景色を、 ひとつずつ増やしていきます。
それが、 私が事業でやろうとしていることです。
最後まで読んでくださって、 ありがとうございました。
— わんこのおみせ
2026 年 5 月
